子供の親権をめぐる問題について

 近年の人的・物的国際交流の進展に伴い、外国人と国際結婚し、外国で家庭を築かれる方々が増加しています。日本とスペインの間でも同様で、当館領事窓口にも国際結婚の届出、子どもの出生届出のため来訪される方がたくさんいらっしゃいます。
 しかしながら、その一方で、これら国際結婚された方々の一部について、不幸にして結婚生活が破綻してしまい、一方の親が他方の親に無断で未成年の子供を国外に連れ出す事例が確認されています。この行為は、スペインにおいて「未成年の奪取」と呼ばれる犯罪と見なされる可能性があります(スペイン刑法第225条bis)。 また、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」等にも留意することが大切です。

1.離婚・離別後の親権

 スペインにおいては、両親が結婚していても、事実婚の関係にあっても(子に対する認知がされていれば)、親権は両親が行使するものとされており、司法上の離婚や離別があっても、両親のいずれかが離婚や別離に係る判決等、法的な根拠により親権を失っていない限り、原則として、共同親権のままであり、両親と子の関係は維持され、両親は互いに他方の親と子との関係を尊重しなければなりません。
 この点、日本では、両親が結婚関係を継続している間は、親権は共同で行使されますが、離婚後は、共同親権が認められておらず、一方の親が親権者になる制度となっており(単独親権、民法第819条第1項)、スペインの制度と大きく異なっています。
 

2.離婚・離別後の親権の行使

 このように、スペインでは、原則として共同親権が維持されますので、両親の司法上の離婚若しくは離別後に、子と生活を共にしない方の親と子の関係は、「親権の行使」の観点から重視されます。そして、離別・離婚条件取り決め書や離別・離婚に係る判決の中で、共同親権に基づいた子の養育についての規定、共同親権の行使、そして、子と同居しない親が子と連絡をとることや面会することについての規定が設定されることがあります。また、子の監護・養育については、判事の裁量により、望ましいとされる措置が採られることもあります。
 日本においては、離婚後に、子と同居しない親が子と面会することについては、民法に明文の規定はありませんが、判例上認められています(面接交渉権)。日本では、面接交渉権は、子供の健全な成長という観点から認められていますが、スペインにおいては、親権を行使する一環としての権利とされていることに注意を払う必要があります。

 

3.いわゆる子供の連れ去りの問題

 スペイン刑法によると、両親の一方が正当な理由なく未成年の子を連れ去ると、「未成年の奪取」と見なされることがあります。この場合の「連れ去り」にあたる行為は、以下のとおりです。
(1) 普段未成年の子と同居している親若しくは未成年の監護権を行使する人または施設の同意無しに、当該未成年者の居住地を変えること。
(2) 司法・行政決定措置により規定された義務を著しく怠り、未成年者を留め置くこと。
 例えば、もしスペインに在住する邦人が、正当な理由なしに、配偶者の同意を得ずに子を日本へ連れて行った場合、その行為はスペイン刑法違反と見なされることがあり(刑法第225条bis.:2~4年の禁固刑及び4~10年の親権剥奪)、スペイン司法当局によって、未成年の奪取容疑者として、国境を越えた手配がされることもあります(他国においては、同様のケースで、日本人が逮捕された事例も発生しています)。
 このように、国際結婚した後に生まれた子どもを日本に連れて帰る際には、両国の法制度の相違に十分注意する必要があります。
 また、未成年者の監護権を行使する人が、正当な理由なく両親に子を会わせない場合、スペイン刑法第223条(6ヶ月~2年の禁固刑)に抵触すると見なされる場合があります。

 

4.国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)について

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